立花隆@東大駒場祭

昨日、東大駒場祭に行ってきて、その時のことをmixi日記に書いたんですが、こっちにも転載しときます。一人称とか文体とか展開とかむちゃくちゃですがね。あと事実認識が違うこともあるので、そこらへんは注意。

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http://www.a103.net/komabasai/59/visitor/special.cgi#3

三田祭からの帰りだったんですが、着いた頃にはもう立花隆氏が講演していました(会場はほぼ満員)

私は大学の最初2年で高校と大学の接続を主に勉強していて、彼の『東大生はバカになったか』をなかなか感心しながら読んでいたので、これは結構楽しみにしていました。

最初の教養学部長の講演と違い、着いたときには会場はほぼ満員。

明確に分けていたわけではないんですけど、講演はおおまかに3つのパートに分かれていました。

1.あるべき理想の教養教育

そもそも教養とは何か。語用論(社会的な言葉の用いられ方)からそれを明らかにするというやり方もある。が、彼はエッセンシャル(よくわからなかったが、要するにどう話されているかではなくどうあるべきかということのよう)からそれを明らかにしようとしている。

『東大生は~』で示された教養教育の図(教養教育のあり方を分類して、樹形図にまとめた図)やオルテガの名著『大学の使命』のエッセンスを取り出しながら、理想像をまず提示する。‥とまぁ、この辺は書き始めるときりがないし、mixiってたぶんそういうのを書くとこじゃないので割愛。

2.全学的な教養学部を持つ東大における教育実施上の問題点

で、壮大に前方を照らした後は、愚直に具体的な例。ゼミ生の発表も挟みながら、駒場・教養教育の何が問題か明らかにしていく。

学生曰く
「東大は2年の教養教育+進学振り分けによって自由な進路選択が可能とされ、受験生の志望動機にもなっている。が、10月に教養教育が成功しているかを訊くと7割の学生がNoと言う。

これはなぜか。科類によってあらかじめどの学部に進むかはだいたい決められている上、進学先の内定結果は2年夏までの成績で決められるので、実際のところは教養・研鑽を積む場ではなく、無事目的の学部に進むため、試験プリント(シケプリ)制度や逆評定(各授業の取得難易度が示されたいわば単位が取りやすい授業集が出回っている)が流通し、結局は点数主義に陥っているという声がそれを示している。」

立花氏曰く「本来、教養教育というのは20Cアメリカで生まれた教養教育のように学生を自らの興味関心に基づいて学べるよう、遊ばせておくようにあるべき。その点で駒場は18Cイギリスの全寮制紳士教育とも違うし、20Cアメリカのそれとも異なる」(教養教育の分類は南原繁のものを借りてました)

駒場の教養教育を構想したのは矢内原という元総長の方らしいのですが、彼の構想によれば今のように2年教養→2年専門ではなく、後期2年の専門教育においても並行して教養教育を続けていくものだったとのこと。

専門教育においては学問的深みが求められる中で、教養教育のような学問横断的な広がりのある議論がなされて(教養教育で得る/得たことがきちんと顧みられて)初めて教養教育が生きるのだ、というのが私の持論なので、矢内原氏の考え方には激しく同意と言わざるを得ません。

3.6:3:3:4制をどう変えるか

ここで、ケーススタディー的な駒場教育論から、話は核心(教育制度論)の6:3:3:4制へ。

結論から言うと、理想的には中高一貫→(アメリカ的)リベラルアーツカレッジ→プロフェッショナルスクール/研究大学院/企業のOJTという提案(旧制高校に似ています)で、確かにそれには僕も同意なんですが、なんというかもうちょっと先の話が欲しいなと。

まぁ、この時点で既に1.5時間の講演時間を30分オーバーしていて、実行委員からの降壇要請も出ていたので、時間切れというところでしょうか(「彼らは将来官僚になるからこういうところにはちゃんとうるさいんだよな」と笑いを取ってましたが)

就活で専門教育が成り立たなくなっている問題も、扱ってはいたのですが、まぁ提示しただけという感じ。

なんかここまで読むと、立花氏は駒場を全否定しているように聞こえますが、全然そんなことはありません。むしろ、駒場にはいい授業もいい本も山ほどあるけど、学生は仏の授業に行って出てこないし、本の存在も全然知らない。

それで、それはもったいないということで出た提案が面白くて、サイバーユニバーシティ構想というもので、全国の大学とをNTTのテレビ会議システムでつないで、駒場の授業を全国に配信するというものらしい。彼は技術的には明日からでもできるがまだ実現の二歩手前だと言っていて、んー、政治的な問題で詰まっているのかと勝手に邪推。

あと、彼のゼミ生が作ったという資料が120P近くあって、学生らしい柔らかい語り口で駒場の問題点や教養教育のありかたを語っています(まだ詳しく読めてませんが)。なかなか気概のある学生さんで一度話をしてみたいなと。一方的な講演会だったのが少々残念です。

最後に彼が講演中で挙げた本をリストアップしておきます。