「スカイ・クロラ The Sky Crawlers」鑑賞記

友達と一緒に見に行ってきました。会場は8割の入りと言ったところで平日にしては入っている方だと思います。以下、ネタバレを含むので未見の方はご注意を。

紋切り型の励ましではなく、静かだけれど確かな真実の希望を伝えたい

人生は辛いもの。でも時々良いことがある。相対的に、生きることは捨てたもんじゃない。

監督の押井氏がサイト上に残したこういうメッセージがどのように表現されているのだろうかと思って、観に行きました。

しかし、夢・焦燥感・希望をどこかに置き忘れたかのように全てを他人事のように振る舞って生きる主人公には(ベタな解釈ですが)ディストピア以外の要素を感じられませんでした。

少なくともそこに生の渇望や希望を見いだす、あるいはそれらを肯定する要素は読み取れることはできませんでしたし、この「空虚な生」のアンチテーゼとしてそれらを描き出せているかと言えば疑問です。むしろ、宿命*1的にキルドレを生きる*2主人公には絶望感すら漂います。

死ぬとわかっていても(であるからこそ)そこに生を見いだしラスボス「ティーチャー」に向かっていくキルドレ達。確かに相対的には生への渇望を求めての行為なのかもしれませんが、私には屈折した生からの逃避にしか思えませんでした。うーん、この映画のどこに希望があったというのだろう。ラストシーンで垣間見えるかすかな希望は若者に向けるにはあまりに弱いのでは(若者はそんなにどん底に絶望しているわけではないと思う)

話とはずれますが「空」のCGは音響も相まって大変迫力がありました。Last Exile以来あんまり良い空中戦を見ていなったのでごちそうさまという感じ。「陸」との良いコントラストになってますね。

まぁ、でも面白いですよ。それは映画そのものじゃなくて、みんなが何を映画に投影しているか観察できる点で。

*1:宿命の定義は鈴木謙介『ウェブ社会の思想』を参照、すなわち「人が自分の人生に関する未来を選択すること、それが宿命のように、前もって決められていた事柄として受け取られる」ということ

*2:より正確に言うならシステマティックなキルドレというシステムを生きる